この夏もとてもとても暑く、着物を着る&着せる仕事をしていると「…暑くないですか?」と心配そうに聞かれました。

特にキモノ初心者の方や、着た事がない方からの質問がすっごく多かったです。

それだけ、この夏が暑いということなんでしょうね。



着ている本人からすると、お袖の部分や衣紋の空きから風が入るので、洋服と比べてそれほど「暑い~!」とは思わないのです。

特に帯のあたりは布が何枚も重なっているのでそう思われますが、着用していると体温が一定に保たれているので皆さんのイメージ程ではありませんよ。

また、汗とり用の下着(肌襦袢やキャミソールでも)や補正のタオルなんかをしているので、身体に汗が伝うことがない。

なので、薄手のお洋服で汗がタラ~ッとなるよりは逆に快適かも?です。



確かに、炎天下は駄目!です。



でも、それも洋服と同じ。

キモノ女子なら、〈日傘〉と〈扇子〉はマストアイテム。

お気に入りの小道具で、あくまでも優雅に(見えるよう。笑)もう少しだけ続きそうな残暑を乗り切りましょう♪



小説の中の〈夏着物〉の記述として好きなのが、我が愛する‘近藤史恵’さんの著書〈ねむりねずみ〉のなかで歌舞伎界の御曹司に嫁いだ若妻が着替えるシーン。







着物と長襦袢が〈絽縮緬〉なので、ほんとに今のシーズンのお話かな?と思います。



以下、第二章より抜粋です。





伊達締めを両手でぎゅっと締める。

絽縮緬の長襦袢の、背中を引いて、衣紋を抜く。

鬱金色の畳紙の上には、白い絽縮緬のつけさげがひろげてある。

わたしは時計をちらり、と見た。あと、十五分くらいで家を出て、車をつかまえれば、なんとかまにあうだろう。

つけさげを肩に羽織り、裾を決める。流水に撫子や桔梗など、秋草の花筏の裾模様。紗袋帯は、少し桃色がかった露芝。

袷の時節ならまだしも、夏の盛りに和服で出歩くのは、なかなかやっかいなことだ。身八つ口からの風通しは心地よいが、帯回りなど、じっとりと汗ばんでくる。

細組の帯締めをきつく締めて出来上がり。鏡で後ろ姿を丁寧にチェックする。

劇場に出かけるときは、少しも気を抜けない。後ろ姿に、うるさいおばさま方の視線が集中する。






ね?緊張感があっていいですよね。

夏の絹物はさぞかし暑く、マダム達の視線はさぞ重いだろうと思うのですが、最後の「帯締めをきつく締めて」の所が自分の時も「さあ、行くぞ!」と言う気合になるのでわかるな~と思ってしまいます。



このシリーズ、歌舞伎界をテーマに市川雷蔵ににた探偵の今泉さんと三階さんの女形・小菊ちゃんが活躍するミステリ物です。

いつも少し悲しいのですが、とても風情のあるお話しなのでご興味のある方は是非シリーズでお楽しみくださいね。

熱量の少ない文章の方なので、暑い時期にも気持ちよく読めます。

この方と、坂木司さんは最近またよく読みだしてます。



追記:同じ著者の〈ガーデン〉を読むと、小説の意味がガラッと変わります。

ヨシザワは歌舞伎シリーズを読んでから、〈ガーデン〉を見るのをお勧めします。